(二)この世界ごと愛したい
未来イコール結婚と言うアキトの脳内方程式。
それを許せるはずもないハルが思わず叫ぶが、咄嗟に私に目を向け起きていないか確認。
目覚めていない私を見て、危ねえと呟いて安堵の溜め息を溢す。
「リンは馬鹿みてえに可愛いが、困ったことに馬鹿じゃねえ。」
「言えてる。」
「だから、リンは未来を見たんだ。」
「…?」
流石のアキトも、これには首を傾げる。
「お前の生き様をリンが認めた。だから、その先をリンは見ようとしてるんだ。」
「……。」
「誇っていいぞ。これは稀だ。」
「…嫁にください。」
せっかくハルが穏やかに喋ってるのに、アキトがまた馬鹿なことを言うもので。
沸点の低いハルが、また殺気を溢す。
「やらねえっつってんだよ。」
「殺気立つな、リンに毒だろ。お前早く行けよ。」
「あーはいはい。邪魔したな。」
小言の多いるうに嫌気が差して、ハルはようやく酒場から出る。
るうは丁寧に私が飲んだコーヒーの後片付けまで済ませて、さらにカイに挨拶をする。
「あんたがリンの面倒見てくれたのか?」
「え、ああ。まあ。」
「睡眠不足で顔色は悪かったが、思ったよりちゃんと食ってそうで安心した。世話になって悪い。」
「律儀な人やな。大したことしてへんよ。」
るうは意外とこう言うとこマメなんです。
コミュニケーション能力が高く、友達が多いのは普段の行いが良いからなんです。悪いのは態度と口だけなんです。
「リンに食わせるのがどれだけ大変か分かってるつもりだ。」
「あー確かに。飯や言うても、いらんとか後でとか。もう大変やけど。あの愛嬌やしほっとかれへんくて。ボランティアやし気にせんとって。」
「恩に着る。」
私に代わってカイにお礼を伝えて、るうもハルを追って酒場を出ようとするが。
ここをトキが引き止める。