(二)この世界ごと愛したい
絶対このタイミングじゃなくても良かったし、もっと落ち着いてから和やかな空気で言うのがベストな気はした。
それでも、相手がるうなもので。
「っ…。」
「本当はさ、他にも言わなきゃいけない人はいるんだけど。この“ありがとう”だけは、るうに一番に言いたかったの。」
「…お前、ここから出るなよ。」
るうは足早に私の部屋から去る。
私はここまで隠して連れて来てもらったので、追放された身で城内とは言え勝手に出歩くことは出来ない。
でも、そうじゃなかったとしても。
今あの背中だけは追い掛けてはいけないだろうと思った。
…ありがとう。
その言葉は、綺麗で優しくて美しいもの。同時に儚くて切なくて胸が痛む言葉。
その痛みさえ、一緒に背負うと決めた。
もう逃げないと決めた。
だって私は、まだ生きているから。
この痛みが、生の証明だ。
「不器用でも、不恰好でも。私はまだ、生きてみたい。」
この部屋で、そう思う日が来るとも思わなかったなと。他人事のように考えていた。