(二)この世界ごと愛したい
帰国して、少し日が経つと私の誕生日の前日。
例の迎春祭とやらが開催される日。
「おい、リン行くぞ。」
「…私…ほんとに行っていいのかな。バレたらかなりご迷惑だよね。」
「俺がいる。大丈夫だ。」
いざとなると、城下町へ降りるのを怖気付く私に。
ハルが手を差し伸べる。
「離すなよ。」
「…離さないよ。」
この手だけは。
絶対に、離したくないです。
「迎春祭って名前、ハルが考えたの?」
「俺とルイ。」
「へー。二人にしてはまともな名前だね。」
「どういう意味だコラ。」
春を迎える祭だなんて。
そんな神秘的でもある名前を付けるなんて思えなかったんです。この二人、頭がアレなので。
「お前が生まれたのは春だろ。」
「そうだね?」
「だからお前は春そのものなんだ。」
「うん、もうわかんない。」
「…お前が春を呼ぶから、桜は咲くんだ。」
無理だな。
やっぱり何言ってるかさっぱりわかんない。
「裏山の一本もお前が生まれる前は咲かなかった。」
「えー初耳だけど。」
「俺もお前が生まれて、初めて生きる理由を知った。」
「ハルが生きる理由?」
珍しくそんな陰気な話をするものだから、私は身を隠すために頭から被っている外套の隙間からハルを見上げる。
話の重さとは裏腹に、ハルの顔は暗くはない。
「俺は、お前を守るために生まれたんだ。」
「…ふーん。」
「興味なしか。」
「興味と言うか、分かりきったことだなーと思っただけ。」
「分かりきってたのか。」
そりゃあ、分かりますよ。
「桜が枯れないようにって、毎日毎日大事にしてたの知ってるもん。」
その命の火が消えないように。
ハルが大事に大事に守り抜いてきたから、私は今ここにいる。
「私の存在が、ハルの強さの証明だから。」