(二)この世界ごと愛したい



「あ、るう。エゼルタ行く時の注文なんだけどさー。」


「…注文?」


「うん。練習しておいて欲しいことがあるの。」


「は?練習?」



仮にも王城ですからね。ここもですが。


敵地なので。嫁ぎに行ったセザールの時とも少し事情が違うもので。





「私を真綿で包むように大事に大事に守る。そんなイメージで練習よろしくー。」


「…いつもやってんだろ。」


「何だその得しかねえ練習は!?」



ハルうるさいな。


そしてるうがいつもやってると言うが。




「いつものじゃ足りない。ハルまで行くとウザいから、その一歩手前くらいで。」


「う、ウザい!?」


「足りない…いつもので足りない…。」



何故かそれぞれ落ち込んだ。


マジでどこまで仲良いんだよこの二人。




「城中煽りに煽り倒すけど、私の戦力あんまり当てにしないでほしいの。だからしっかり守ってね。」


「じゃあ煽るなよ。」


「ルイ、不安なら今からでも代われ!?」


「代わらねえ。」



おっと、放っておいたらまた喧嘩に発展しそうだ。




「あの…」



「代われよ!俺が行った方が効率的にリンを守れるだろうが!」


「お前が効率とか言うな。意味分かってんのか。」


「それくらい分かるに決まってんだろ!?馬鹿にしてんのか!?」


「今頃気付いたのか。」


「よし、殺す。今すぐ殺す。」



私の声掛けも虚しく、始まってしまった喧嘩。


困ったもんだなー。




「っあの…!」


「「…どうした?」」



とりあえず言い合いを止まさせたくて、少し声を張ると二人して私に心配の目を向ける。





「…今日は…仲良く、三人で寝たいなーなんて。考えてたんだけど…。」


「「……。」」


「だ、だめ…かな…?」



ダメなわけがないことは知っている。


その証拠に、ハルがまた目を抑えて涙を堪えてるし。るうが壁一直線にごっつんの儀式を始めた。





「まず風呂だな。準備するからちょっと待ってろ。」


「俺も風呂行ってくる。」



各々落ち着くと、またこちらに視線を戻して動き始める。





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