(二)この世界ごと愛したい
「この城以上の戦果はねえだろ。」
「そこはあって欲しかった。」
「お前がこうして笑ってる。俺にはこれ以上の褒美もねえ。」
「…まあ、戦果は…確かにないよね。敵将討ち損じたわけだし。」
そこを突くとハルはバツが悪そうにする。
「ハルのご褒美も、それだと貰ってるのは寧ろ私だよー。」
「あの首は絶対に俺が取る。」
「だからそこはシオンと相談してねー。ハル一人で決めちゃダメ。」
「俺が…アイツに、相談?」
友達なんだろうから連絡取り合えば良いんだ。
シオンは本当に頭が良いので。その辺は凄く頼りになると思っている。
「私から言っておこうか?」
「断る。てかシオンと話すな。近寄るな。」
「…そんなことすると、あの性悪は何するか分かんないからなー。」
「分かってるなら関わるな。」
「無理だよ。シオンは……。」
シオンは、たぶん。
もう私から離れてはくれない…と思う。
忘れてもくれない、想わずにも居てもくれない。
「あ?」
「狼ってさ、意外と情に熱いんだよ。一度掛けた情けがシオンから離れないなら、私もそこに向き合うよ。」
「ほっとけ。全部アイツが勝手にやってたことだ。リンには関係ない。」
「…ほっとけないから、解き放つためにエゼルタに行くの。恩は恩で返さなきゃね。」
シオンとトキ。
私にとって大切な二人を、助けてくれた優しい兄弟を、自由の元へ連れて行きたい。
「自由になったシオンが、ちゃんと自分の道を選んでくれて。そこでやっと、私への情けは消せるんじゃないかなって。」
「シオンの気持ちが単なる情けだと思ってんのか。」
「…さあ?シオンそういう話しないし。」