(二)この世界ごと愛したい
情けでは補えないくらい想われていることは、流石に分かっている。
でも敢えて、そこは今は聞きたくない。
「自由になったシオンが出した答えなら、聞いてあげられるかもしれない。」
「…シオンを選ぶなよ。」
「だから、ハルを超える人はいないんだって。」
「可愛い!!!」
そしてそして。
城内へ足を進め、その最上階から周囲を見渡せるようになっていたので景色を眺める。
まず気になったのは、この城をアレンデールが所有するために奪い返されないように守備を整えなければならないなと思ったこと。
そして、より強固に繁栄させることまで考えるとこの場に住人を集めて統治する必要があるなと感じたこと。
さらに、ここには花見に来たんだが。
「…ねえ、ハル。」
「……。」
「…お花咲いてないけど。」
「……。」
アレンデールは、他より少し暖かい気候なので桜が咲くのも早いのだと知っていた。
良く考えれば、ソルの地ではまだ蕾だ。
「…うん。まあ、お花見はまた今度ね。」
「リン…さ、桜が…。誕生日…咲いてない…。」
「はいはい、大丈夫だから泣かないでね。とりあえず書く物ちょーだい。」
「か、書く物…。はい。」
私は落ち込みまくるハルに、紙とペンを準備させてスラスラと書き物を始める。
「リン…?」
「なーに?」
「何書いてんだ?」
そんな質問を投げたハルに、私は笑顔を向ける。
「馬鹿な兄の不始末を、どうもやらなきゃいけないようなので。各種伝達から手を付け始めたの。それが何か?」
「……。」