(二)この世界ごと愛したい
どうやらこのお花見旅行。
決して甘く楽しいものになりそうにはありません。
「城は落として終わりなの?守備も疎かにして?守る気あんの?お花見した後は易々奪い返させるつもりだった?そんなことしたら隊士さんの頑張りいよいよ無駄だね?」
「……。」
「ここから統治するところまでがハルの仕事じゃないの?私を迎えに来るより先にやること山積みだったよね?やらずに来ちゃったの?何でそんなこと出来るの?馬鹿なの?」
「…す…すみませ…ん。」
こんなの一日で終わるわけがない。
大急ぎで私はカイに再びクロを飛ばし、戻るのが遅れることを伝える。
さらにアレンデールのるうへ、ハルがしばらく戻れない事の顛末を報告。
「…さて。」
「……。」
「これ今すぐ準備して来て?」
「…はい。」
メモとして書き記した物を、ここへ運べとハルを使う。
速やかに行動するハルはどうやら反省はしているようなので。私も諦めよう。
ハルの準備物を待ってる間に、それぞれから届いた返事に目を通す。
『了解。ほなまた戻る日はっきり決まったら連絡よろしゅう。』
心の広い雇い主で有り難い限りです。
『ハルは別に帰ってこなくてもいい。無理すんなよ。』
るうの言う通り。このハルの馬鹿さ加減と来たら、本当に勘当したくなるのも無理はない。
そして私への心遣いも嬉しい。
「…ん?」
るうからの伝書は二枚重なっていた。
それに気付いて二枚目を見る。
『誕生日、おめでとう。』
至ってシンプルな、るうらしい。
そんなことに思わず笑みが溢れてしまう。
「ありがとう、るう。」
とりあえず皆さんに迷惑を掛けつつも、了承は得られたので。
「リン!持って来た!」
「おかえり。とりあえずここに全部置いて、ハルは座ってください。」
未だ怒る私に怯えるハルは、私の言う通り荷物を私の近くに置いてストンと大人しく座った。
そんなハルの頭を思いっきり押して、身体ごと横にさせる。
「りっ…!?」
「戦も含めて、お疲れ様。移動も疲れただろうし、ハルは少し休んでください。」
私はハルの頭を自分の膝に乗せる。
「リンー。」
「長期の戦頑張ったご褒美ね。なので仕方ないからここ考えるのは私が引き受けるよ。ちょっと寝ててー。」
「あーリンー。」
「うん、甘えないでね。起きたら嫌ってくらいやることあるからよろしく。」
「…オヤスミナサイ。」
「おやすみー。」