(二)この世界ごと愛したい
本当に眠たかったのか、夢の世界へ現実逃避したくなったのか。ハルは一瞬で眠ってしまった。
その間で、私は城の守備について考える。
持って来てもらった城の見取り図と、周辺の地図を照らし合わせ守備配置を決めて。指示出し用に別の紙にそれを書き起こす。
他にも、戦での被害情報が書かれた報告書に目を通して。改修を要する箇所、修復が必要な場所を書い出し、そこに費やす兵力も計算して併せて書き記す。
これだけでもかなり時間が掛かったし、私も移動で馬に揺られて疲れなかったわけではない。
「はー…。」
ふと、膝を見るとハルがすやすや眠っていて。
それが何故だか嫌で。
嫌だと思って、気付いた。
今は私が強引に無理矢理寝かせてしまったが。
思い返せば、ハルの寝顔を見たくないと私が言ったことがあったので。あれから一度もハルは私が起きてる間に眠ってはいない。
「…ばか。」
そんなことを律儀に叶える暇があるのなら、もっと戦後のことを考えてくれても良いじゃないか。
でも、それがハルだ。
いつだって私のことしか頭になくて、私のためにどこまでも頑張れるハル。
「…せっかくだから、咲くまで一緒にいよう。」
桜が咲くまで。
ハルとここで一緒に過ごそうと思った。
それは実は、そんなハルと離れたくない私の我が儘だったり…するのかもしれない。