(二)この世界ごと愛したい



「…謝るより、もう一つ褒美をくれ。」


「え?」


「それで俺は不眠になれる。」


「…ならないでよ。何のご褒美がいいの?」



まだ灯りはないのに、ハルが私を抱き抱えて部屋の中を歩いて一点で立ち止まる。


ふかふかした感触で寝台に降ろされたことは理解出来た。




「ハルすごいね。私何にも見えないよ。」


「勘だ。」



ハルの直感凄いな。



そこで、寝台に降ろされた私からハルが離れるのが何となく分かった。




「どこ行くの?」


「灯り探す。」


「あ、ごめん。私実は灯り付けれる。」



炎属性なもので。


本当はいつでも付けられました。




「あーそうだったな。」



なら付けなくていいかと、ハルが戻って来た。


だけど別に私に付けろとは言わない。




「城のことは明日だな。」


「…うん。」


「マジですまん。リンにやらせようなんて本当に思ってなかったんだ。」


「分かってるよ。」



そんなつもりじゃないことくらい分かってる。


悪気があったわけでもないことも知ってる。




「嫌いになるのは勘弁してくれ。褒美はそれでいい。」


「そんなの…。」



なりたくないし。


きっと、なりたくてもなれないし。




「お前に嫌われるのだけは嫌だ。絶交は嫌だ。口聞いてくれねえのも嫌だ。」


「…うん。」


「よし。リン寝るか?」


「眠たく、ない。」


「…うるせえルイも居ねえし。今日くらい夜更かしするか。」


「えっ?」



途端私はまた抱えられる。




「何も見ねえから、ちょっとだけ照らしてくれ。」


「っ…。」



私は指先に、小さく炎を灯す。


たぶん足元くらいしか照らせない程の火力。自信のなさが大いに出ている。面目ない。





< 942 / 1,120 >

この作品をシェア

pagetop