「逢いたい」でいっぱいになったなら~私の片想いが終わるとき
うち、来る?
電車を降りて、改札をでた。
駅の外に近付くにつれ、金曜日らしく一週間の疲れをとりたい大人たちが、楽しげに酔っぱらっていた。
この町は、駅から少し離れると、一人暮らしの社会人や学生さん用のアパート、マンションが立ち並んでいる。駅の近くは大きな駅ビルやビジネスホテルがあり、飲食店も軒を連ねているから、金曜日の夜や週末はこんな風に賑わっているのだった。
盛り上がっている学生さんの集団の横をすり抜けて駅を出る。
騒がしい駅から少し離れて鞄からスマホを出した。
コウさんに電話を掛けるためだった。
すると、画面にコウさんからのメッセージが表示されていた。
『改札で待ってて』と。
キョロキョロとコウさんを探す。
当然だけど、見つかるわけもない。
私はコウさんからの着信を聞き逃さないように、着信音の音量を上げた。
そして、スマホを手にしたまま駅前の横断歩道を渡って駅の中に戻った。
コウさんを探しながら改札へ向かう。
先程すれ違った騒がしい学生さんの横を再び通っていると、
「あれー?お姉さんさっきもここ通らなかったあー?」
「もしかして迷子なのー?」
酔っ払いの若者男子に声を掛けられた。
彼らに目を合わさないようにして、
「通ってませんー」
と言いながら通り過ぎようとしたが、隣を付いて来る。
「ええー嘘だー。お姉さん可愛いなって思ったもんー。間違えないよー」
「おい、やめろよ」
横から友人らしき人が諫めてくれた。
「ごめんね、お姉さん。こいつ酔っ払っててさー」
だろうな。
そのまま黙って通り過ぎようとすると、止めたはずの男の子が、
「で、お姉さん一緒に呑みに行かない?」
と、一緒になって絡んできた。
失敗した。
つい返事しちゃったからだ。
「行きません」
「飲みたくないなら遊びに行くのでもいいよ」
「頑張って奢るからさ」
こんなところで頑張るくらいなら、もっと他所で頑張ってくれと思いながら、無視して歩く。
「ねえねえー」
「お姉さん、怒っちゃったぁ?」
「おい」
しつこい男の子たちの声に被さって低い声がした。
「俺の彼女になんか用?」
振り返るとそこにはコウさんがいて、三人を思いっきり睨みつけていた。
コウさんの姿を見てホッとした。
そして恐い顔のまま私に近付いて来た。
私と隣の3人の間に緊張が走った。
整った顔立ちの人が怒りを滲ませる表情が物凄く恐い!
きっと3人も同じことを考えている。
そう思った時、肩をすっぽりと包み込まれた。
コウさんの腕の中に抱き込まれたのだ。
「可愛いのは分かるけど、俺のなんだよね」
「「「すみませんでした!!!」」」
3人は叫んで逃げ出した。
私はホッと息を吐き、固まっていた身体の力を抜いた。
コウさんも、抱きしめていた腕の力を抜いた。
力が抜けたのは分かったけれど、コウさんは私をその腕の中から出すことはなかった。
そして、顔を覗きこんで、
「大丈夫?」
と尋ねられた。
「うん。ありがとう」
コウさんは腕の中から私を開放した。
「お帰り」
「ただいま」
ただそれだけの会話だったが、何となくホッとした気持ちになった。
落ち着いたところで、コウさんの服装を見た。
コウさんはダークグレーのパーカーに白のリブパンツというラフなスタイル。
何を着ても似合う。普段着もかっこいい。
でもこの服って仕事用じゃないよね?
もしかしてまだ帰っていない私のためにわざわざ迎えに来てくれたのだろうか。
「家から来たの?」
と尋ねると、
「うん、そうだよ」
と当たり前の用に返事をされた。
「わざわざ迎えに来てくれたの?」
「まだ電車って言ってたからさ、ちょっとでも美琴の顔を見たいなって思っただけだよ」
ストレートな物言いにドキドキしてしまう。
「それにコンビニにも行きたかったから、わざわざってわけではないよ」
「そっか。でも、ありがとう。来てくれて」
「どういたしまして。よし、帰るか」
「うん。あのね、コンビニに行きたいんだけと、寄ってもいい?」
「もちろん。一緒に行こう」
「うん」
隣同士並んで歩いた。
やっぱり私は道の外側を歩くのだった。
駅の外に近付くにつれ、金曜日らしく一週間の疲れをとりたい大人たちが、楽しげに酔っぱらっていた。
この町は、駅から少し離れると、一人暮らしの社会人や学生さん用のアパート、マンションが立ち並んでいる。駅の近くは大きな駅ビルやビジネスホテルがあり、飲食店も軒を連ねているから、金曜日の夜や週末はこんな風に賑わっているのだった。
盛り上がっている学生さんの集団の横をすり抜けて駅を出る。
騒がしい駅から少し離れて鞄からスマホを出した。
コウさんに電話を掛けるためだった。
すると、画面にコウさんからのメッセージが表示されていた。
『改札で待ってて』と。
キョロキョロとコウさんを探す。
当然だけど、見つかるわけもない。
私はコウさんからの着信を聞き逃さないように、着信音の音量を上げた。
そして、スマホを手にしたまま駅前の横断歩道を渡って駅の中に戻った。
コウさんを探しながら改札へ向かう。
先程すれ違った騒がしい学生さんの横を再び通っていると、
「あれー?お姉さんさっきもここ通らなかったあー?」
「もしかして迷子なのー?」
酔っ払いの若者男子に声を掛けられた。
彼らに目を合わさないようにして、
「通ってませんー」
と言いながら通り過ぎようとしたが、隣を付いて来る。
「ええー嘘だー。お姉さん可愛いなって思ったもんー。間違えないよー」
「おい、やめろよ」
横から友人らしき人が諫めてくれた。
「ごめんね、お姉さん。こいつ酔っ払っててさー」
だろうな。
そのまま黙って通り過ぎようとすると、止めたはずの男の子が、
「で、お姉さん一緒に呑みに行かない?」
と、一緒になって絡んできた。
失敗した。
つい返事しちゃったからだ。
「行きません」
「飲みたくないなら遊びに行くのでもいいよ」
「頑張って奢るからさ」
こんなところで頑張るくらいなら、もっと他所で頑張ってくれと思いながら、無視して歩く。
「ねえねえー」
「お姉さん、怒っちゃったぁ?」
「おい」
しつこい男の子たちの声に被さって低い声がした。
「俺の彼女になんか用?」
振り返るとそこにはコウさんがいて、三人を思いっきり睨みつけていた。
コウさんの姿を見てホッとした。
そして恐い顔のまま私に近付いて来た。
私と隣の3人の間に緊張が走った。
整った顔立ちの人が怒りを滲ませる表情が物凄く恐い!
きっと3人も同じことを考えている。
そう思った時、肩をすっぽりと包み込まれた。
コウさんの腕の中に抱き込まれたのだ。
「可愛いのは分かるけど、俺のなんだよね」
「「「すみませんでした!!!」」」
3人は叫んで逃げ出した。
私はホッと息を吐き、固まっていた身体の力を抜いた。
コウさんも、抱きしめていた腕の力を抜いた。
力が抜けたのは分かったけれど、コウさんは私をその腕の中から出すことはなかった。
そして、顔を覗きこんで、
「大丈夫?」
と尋ねられた。
「うん。ありがとう」
コウさんは腕の中から私を開放した。
「お帰り」
「ただいま」
ただそれだけの会話だったが、何となくホッとした気持ちになった。
落ち着いたところで、コウさんの服装を見た。
コウさんはダークグレーのパーカーに白のリブパンツというラフなスタイル。
何を着ても似合う。普段着もかっこいい。
でもこの服って仕事用じゃないよね?
もしかしてまだ帰っていない私のためにわざわざ迎えに来てくれたのだろうか。
「家から来たの?」
と尋ねると、
「うん、そうだよ」
と当たり前の用に返事をされた。
「わざわざ迎えに来てくれたの?」
「まだ電車って言ってたからさ、ちょっとでも美琴の顔を見たいなって思っただけだよ」
ストレートな物言いにドキドキしてしまう。
「それにコンビニにも行きたかったから、わざわざってわけではないよ」
「そっか。でも、ありがとう。来てくれて」
「どういたしまして。よし、帰るか」
「うん。あのね、コンビニに行きたいんだけと、寄ってもいい?」
「もちろん。一緒に行こう」
「うん」
隣同士並んで歩いた。
やっぱり私は道の外側を歩くのだった。