「逢いたい」でいっぱいになったなら~私の片想いが終わるとき
コウさんとおしゃべりしながら歩いてているうちにコンビニに着いた。

私はお弁当コーナーを見て、どれも食べたくないなと思った。
夜ご飯を買いに来たのに、胃が受け付けそうもない。
お腹を摩りながら、何かは食べなきゃなと『1日30品目サラダ』とヨーグルトを手に持った。

「入れていいよ」
隣に並んだコウさんが声を掛けた。

「ううん。大丈夫」
「それ、夜ごはん?」

「うん。野菜、大事よね」
「大事だけど、まさかそれだけ?」

「あとは家にあるもので」
確かプロテインバーの買い置きがあったはず。
お腹すいたらそれ食べればいいや。




会計を済ませてコンビニを出た。
「ありがとうございます」
結局奢っていただいたのでぺこりとお礼を言った。

「どういたしまして」
コウさんに手を繋がれた。それは自然に、まるで当然かのように手を繋がれた。

コウさんを見上げると、
「おつかれ」
と言われた。
視線を前に戻し、こくんと頷き、
「うん。疲れた」
と呟いた。

本当に、疲れた。いろんな意味で。

健の顔が脳裏に浮かんで心がもやっとした。
その感情をごまかしたくて、俯いた。
そして歩く自分の足を眺めながら、歩を進めた。


「明日は休み?」
「ううん、仕事。でも昼までに行けばいいから少し朝はゆっくりできるの」

「展示会の準備ってやっぱりたいへん?」
「うん。通常業務プラスアルファって感じだからね。やることも多いし、もうクタクタ」

「そうかー。頑張ってるんだな」
「うん。年に2回の展示会だし、いいものにしたいし。頑張るよ」

「美琴、少し痩せた?」
「わかんないけど、痩せてないと思うよ」

「この1週間で痩せてるよ。疲れてもちゃんとご飯は食べなさいね」
と心配された。

「はい。お母さん」
「誰がお母さんだ」
「はは」

足元を見ていた視線は、気付けばコウさんの方を見上げていた。

優しい目で私を見つめるコウさんは、
「ん?」
と尋ねてくる。

無自覚なイケメンの甘い表情に、私は無言のまま視線を逸らした。



このままコウさんに甘えてしまいたいと願ってしまう。
同時にダメだとストップをかける自分がいる。

そんな葛藤の結果、コウさんの腕に近付いて頭をあて、その腕に頭をグリグリと押し付けた。
…これが私の考える、色気のない甘え方だった。

「フッ。猫か?」
と言うので、
「ゴロゴロゴロ」
と鳴くと、
「甘えたいらしい」
と言って、頭にコウさんの唇が触れた。

え?えええ!!??
コ、コウさんが頭にキ、キスした!?

咄嗟に身体を離して、ガバッとコウさんを見上げた。

「右手が荷物で塞がってたからね。口で撫でといた」
と買い物袋を持ち上げて見せた。

そ…それは頭ポンポンの代わりってことですか?

ドキドキが止まらない私に、
「何かあった?」
と尋ねた。

「え?」
一瞬で健との会話を思い出す。

「うち、来る?」
コウさんに見つめられる。

その甘い瞳に私は固まって動けなくなってしまった。


「うち、来る?」

コウさんと目が合う。
真っ直ぐな視線に目が離せなくなっていた。


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