「逢いたい」でいっぱいになったなら~私の片想いが終わるとき
膝の間に私を入れたまま、コウさんが少し離れて、
「まずは直近の幸せな未来の選択肢を上げましょう」
「ん?」

「美味しい豚汁か、入浴剤入りのお風呂。
どちらをご所望する?」
「えー。うーん、豚汁で!」

「了解。ちょっと温めてくるから待ってて」
「手伝うよ」
「ん。その前に俺のジャージ、履いておきなさいね。俺の理性がどっか行っちゃうからね」
「え!あ!はい!」
「ふふふ」
立ち上がったコウさんは、頭ポンポンしてハーフパンツを貸してくれた。

洗面所をお借りして着替え、キッチンに向かう。

「何したらいい?」
「そうだな。豚汁ついでもらっていい?」
「はーい。コウさんどのくらい食べる?」
「おたまに1杯半で」
「はーい」
「熱いから気を付けてね」
「うん」

「美琴のごはん。俺がよそってもいい?美琴がする?」
「あ、自分でやってもいい?」
「ん。杓文字ここね」
「うん。ありがとう」

「汁、持ってくよ」
「ありがとう」

……本気でお母さんか?
気が利きすぎない?


お茶碗を持っていくと、そこには湯気のたつ豚汁に卵焼きと、じゃこを煮たのが並んでいた。

本気でお母さんだ!



「コウさんには欠点はないの?」
「は?」

物凄く美味しい豚汁を飲みながら尋ねた。
具だくさんな豚汁。夜食でパパっと作ったというのに、このクオリティ。

見た目もよし。性格も面白くて優しい。運動もできる。挙句に料理上手。
何でこんなにハイクオリティな人が私と付き合いたいって思うんだろう?

「ご飯、ものすごく美味しい。コウさんって料理も上手なのね」

食欲がなかったはずなのに、優しい味噌汁の味に食が進む。

「ありがとう。料理、好きなんだよ」
「へえ。料理教室とか行ったの?」
「ううん。うち共稼ぎだったから子供の頃から手伝いと称していろいろ教えこまれたからね。特に俺、一番上だったからご飯はよく作ってた」
「何人兄弟?」
「3人。弟と妹がいるよ」
「分かる。コウさんってお兄ちゃんっぽい」

いろいろと納得してしまった。
確かに面倒見がいいコウさんはお兄ちゃんタイプだなと思う。

「美琴は?」
「2つ上の兄が一人。全然ご飯なんて作ってくれなかったよ」

もぐもぐもぐ。

二人でおしゃべりをしながら、コウさんにとっては夜食、私には遅い夕食を食べる。

「ふふっ」
不意にコウさんが笑った。

「どうしたの?」
と問う。コウさんは嬉しそうにこちらを見ていた。

「美琴はおいしそうに食べるよね」
「ん?美味しいよ?」

「ありがとう。俺、ご飯をおいしそうに食べる子って好きなんだよね」
「食いしん坊が好きってこと?」

「確かに美琴は食いしん坊だけど、それとはちょっと違うかな。
いつも綺麗に味わって嬉しそうに食べるでしょ。
そういうのって、一緒に食事していて気持ちがいいんだよね」
「自分ではわかんないけど、なんか、ありがとうございます?」
「どういたしまして。俺の方こそ、おいしい美味しいって食べてくれてありがとう」


< 42 / 109 >

この作品をシェア

pagetop