「逢いたい」でいっぱいになったなら~私の片想いが終わるとき
「もしもし?」
『あ!織部さん!お休みの日にすみません』
「うん、大丈夫だよ。どうしたの?」
『あの!うううう・・・』
ええええ!?
電話の向こうで山口さんが泣き出した!?

「もしもし?どうしたの?」
『ぐすん・・・あの・・・昨日届いた、カタログに、・・・ミスを見つけて・・・う・・・ぐす・・・』
印刷したばかりのカタログにミス…。
泣いている様子から山口さんが担当した部分のミスなのだろうと検討をつける。
担当は山口さんだけれど、私も確認したはずだから、2重チェックから外れた水があったのだろう。
まずいな。

「山口さん?大丈夫だから、まずは落ち着こう。
うん、息しようか、ね?」
『はあ、はあ。ぐす。…はい、すみません』
ちらりとコウさんを見る。
コウさんも電話が気になるようで、心配そうにこちらをチラ見する。

『あの・・・私が入力した、成分表示が違ってて』
「うん」
『足したら110%になっちゃってて・・・ぐす』
「え?110%?ああと、うん」
『どおしましょおおおおおお』
「あー、うん。分かった。大丈夫だから。うん。泣かない」
『あいぃ』

『うん。今、山口さんは会社にいるんだよね?」
『あい…ぐす』
「自分のデスク?」
『机の下ですぅ』
「え?机の下?隠れてるの?」
『ううう』

「とりあえず、そこから出て、椅子に座ろうか」
『ううぅ』
「ええっと、それじゃあ、そのままでもいいや。今、室内に誰が来てる?」
『…課長がいます』
「それなら、まずは課長に報告しよう。今後の指示、出してくれるから」
『…はい』
「営業の方はだれかいる?」
『待ってください・・・ガタッ、ガタ・・・えっと…明石さんが来てます』
「そう…今日も来てるんだ…。
うん。じゃ、明石さんにも伝えて。営業部の方はそれで大丈夫。明石さんが対処してくれるから。
ちょっと待ってね」

スマホを胸に抑えて、声が聞こえないようにして、コウさんに顔を向けた。
コウさんと目が合う。
「会社でトラブルがあったみたいで。ごめんなさい、今日…」
「わかった。行ってあげて」
「ごめんなさい。ありがとう」

再びスマホを耳に当てる。

「山口さん?」
『はい』
「まず、山口さんは今から課長と明石さんに、すぐに報告と相談して」
『…はい』
「私もこれから会社に向かうから。そしたら一緒に処理しよう」
『はい。すみません。織部さん、昨日も出勤だったのに』
「大丈夫!しっかり休んだから。それよりちゃんと課長たちに状況を説明するんだよ」
『はい』
「頑張って」
『うぅぅぅ・・・あい』
「多分、再チェックして修正するっていう話になるはずだから。
そんなに怯えないで大丈夫、安心して。
時間的にも間に合し、みんなで協力して絶対に何とかするから!」
『はい』
「それに、私も課長も確認してOKだしたんだから、山口さんが一人の責任だと思わなくていいよ。
まずは今できることをしよう」
『はい』
「それじゃ、後でね」
通話をきった。


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