「逢いたい」でいっぱいになったなら~私の片想いが終わるとき
ガチャと玄関を開けると、コウさんがいた。
「おかえりなさい」
と言うと、ものすごーく嬉しそうに笑って、
「ただいま」
と言った。

「めちゃくちゃいい匂いがする!」
「カレーだよ。好き?」
「大好物!」
「よかった」
「お邪魔します、あ、これお土産」
「ありがとう。ピーチのスパークリングワイン?」
「うん。カレーって言ってたから甘くて合うかなって思って」

私の部屋は7畳に約3畳の対面キッチンがついたワンルームだ。
コウさんの部屋のように寝室が別にあるわけではない。
部屋に入るとベッドが一番奥に見えるところが少し恥ずかしい。

「美琴、もしかして寝てた?」
「え?なんで?」
「ほっぺに跡がついてる」
「ええええええ!?」
慌てて掌で両頬を隠した。

「はははっ。隠さなくてもいいのに。仕事頑張ってたから疲れてるんだろ?」
「ううう」
「それに、昨日あんまり寝かせてあげれなかったしね」
「もう!コウさん、やらしい!」
「はははははっ。揶揄いがいがあるね、かわいい」
「それ、誉め言葉じゃないから」

麦ごはんをついでカレーをかける。
冷蔵庫から春雨サラダとオクラのおかか和え、福神漬けを取り出す。
コウさんが袖をめくり、ナフキンをスパークリングワインにかけて、蓋を開ける。
「私、コウさんの腕、好きなのよね」
「腕?」
「うん、この筋がかっこいい」
人差し指で、浮かんだ筋を撫でた。
「うおおおおッ」
とコウさんが悶えた。
「ええ?!」
「ぞぞぞぞってするから止めなさい」
と言う。
「へえ、ぞぞぞってするんだ」
そんなこと聞いたら…ねえ?
ぴんと人差し指を立ててにやりと笑う。
「うわ!美琴、めっちゃ悪い顔してるから!」
「あははははッ」

一通りふざけた後、ポンっといい音を立てて蓋が開いた。
ワインをシャンパングラスに注いで、グラスを持ち上げ、中の液体を眺める。
ピーチのスパークリングワインは薄っすらとピンク色で浮かんでくる小さな泡がとてもきれいで、かわいらしかった。



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