「逢いたい」でいっぱいになったなら~私の片想いが終わるとき
「大学の時からいろいろ噂にはなったけど、健と付き合ったことなんて1度もないし、恋愛対象として見たことすらないから」
「え?そうなの?」

こくんと頷いた花ちゃんは、私を見て一度微笑んで話し始めた。


「壮は私の高校時代の家庭教師だったの」

大学合格が決まって花ちゃんから告白したこと。
壮さんも花ちゃんが好きだったこと。
大学で壮さんの弟の健に会ったこと。
当時健には遠距離の彼女がいたにも関わらず、心配症な壮さんは健に命じて花ちゃんにちょっかいを出してくる男の子たちを牽制させていたこと。
大学生の頃実家暮らしだった健から預かって壮さんへ渡したりしてたことも、二人が付き合ってると誤解された理由の1つだったこと。

そんな話を聞いた。

「健から、『美琴が結婚おめでとうって伝えてって言ってた』って聞いてたんだけど。もしかして、美琴は私と健が結婚すると思ってたの?」
「…うん。二人がずっと付き合ってると思ってたから、花ちゃんが結婚するって聞いて疑うこともなく」

「そうだったの…」
「うん」

「健は何にも言わなかった?」
「うん。特に」

「…多分、健は美琴が誤解してると思ってないんだよ。だって、もしそうなら否定すると思うから」
「でも、健に結婚おめでとうって言ったんだよ?それでも否定しなかったよ」

「うーん。自分のお兄ちゃんと私の結婚祝いを言われたとでも思っていそうだなあ」
「…まさか」

「健もああ見えて天然だからなあ…。でも、健はこの2、3年は付き合ってる人はいなかったはずだよ」
「そうなんだ」

健と花ちゃんは付き合ってなかったんだ。
もっと早くに知っていたら…と一瞬浮かんだひどい考えを、頭を振って払った。 

ちょうどそのタイミングで試合開始の笛がなった。

「よし!とりあえず、応援しよう!」
「うん!」
コウさんの応援しなくちゃ!
健のことを考えないようにして、私は試合に意識を向けた。


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