「逢いたい」でいっぱいになったなら~私の片想いが終わるとき
コウさんのことを好きと言ったのは嘘じゃない。
本当にコウさんが好き。
好きなのに…。

振り向かない背中を見つめた。
振り返ってよ!
いつもみたいに笑って、手をさしのべてよ!

コウさんの背中が離れていく…そんなの…やだよ!

嫌だ!
離れた距離が嫌で駆け寄った。
背中に抱きついて、叫ぶ。

「やだ!私はコウさんが好きなんだよ!
嫌だよ!
こんな風に離れないで!」

コウさんは振り向き、私の腕を掴んで抱き寄せた。
顔を上げされられ、激しいキスをされる。
口中を舌が暴れる。
私は「好き」だと伝わるように、必死に舌を動かした。
お願い、コウさん!好きだと言って!
美琴は俺のものだって言って!

激しくて、長いキスに頭がクラクラする。

ゆっくりと離れた唇から、唾液がつたう。
「はあはあ」
「はあはあ」

コウさんは私の顔を覗き込み、頬に伝わるいくつもの涙の痕をぬぐった。

私はコウさんの顔を見た。

コウさんも私を見つめ返す。

「私…コウさんのこと好きよ」
「うん」

少し寂しそうに微笑まれた。

コウさんは私の顔を見たまま頷いた。
「私が好きなのは、コウさんだよ」

コウさんの顔は寂しそうなまま。

どうしてそんな顔するの?
両想いになったのにそんな顔するの?
私は健じゃなくてコウさんのことが好きなのに。

「俺も美琴が大好きだよ。
だからもう一度考えて。
美琴の気持ちがどっちにあるのか」

「…コウさん」

「送るよ」

コウさんは再び背を向けた。

「ここでいい。一人で帰る」

コウさんを追い越して、私は玄関を出た。



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