「逢いたい」でいっぱいになったなら~私の片想いが終わるとき

最後のキス 【磯ヶ谷紘一】

「やだ!私はコウさんが好きなんだよ!
嫌だよ!
こんな風に離れないで!」

美琴の叫ぶよう声に、俺は耐え切れずに美琴にキスした。
優しさの欠片もないような、感情に任せたキスをした。
あんなに幸せだったキスだったのに、美琴が好きで、好きで、好き過ぎて、苦しかった。
顔の向きを何度も変えて、貪るようなキス。
一瞬でも離れないように、激しく口づけた。
必死に答えようとする美琴の気持ちが伝わってきて、苦しかった。

ゆっくりと離れた唇から、唾液が垂れた。
「はあはあ」
「はあはあ」

乱れる呼吸。
本当は離れたくなかった。
このキスが終わったら、美琴が離れていくかもしれない。
このキスが最後のキスになってしまうのかもしれない。

美琴の頬に伝わるいくつもの涙の痕をぬぐった。

俺と目が合う美琴の瞳が、こぼれそうになっている涙で揺れる。

「私…コウさんのこと好きよ」
と美琴が呟いた。

知ってる・・・。

「うん」


「私が好きなのは、コウさんだよ」
もう一度、はっきりと言った。

知ってるよ・・・。

「うん」


でも、それは、明石さんと花さんが結婚すると思っていたからだろう?
フラれたって思っていたからだろう?

俺から見たら、明石さんは美琴のことが好きなんだよ。


二人は両想いだったんだよ…。


俺が勝手に横から美琴に手を出しただけなんだよ。

分かってるんだよ。
分かってるけど…それでも、まだ。

それでも、俺を選んで欲しいと思っている俺がいるんだ。


「俺も美琴が大好きだよ。
だからもう一度考えて。
美琴の気持ちがどっちにあるのか」

「…コウさん」
泣いている美琴の背中を押して、
「送るよ」
と強がった。

「ここでいい。一人で帰る」
そう言った美琴は俺を見ることもなく玄関から出て行った。


「…くそっ‥‥‥」
ドンっと壁を殴った。

追いかけたい衝動をぐっと抑えた。






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