「逢いたい」でいっぱいになったなら~私の片想いが終わるとき
「驚いたか?」
「う、うん‥‥あのさ…その…『好きな子』って…もしかして…私のこと?」

「そうだよ。美琴のことが好きだったんだよ」

笑うこともなく、真っ直ぐに見つめる健の瞳に、これが冗談でもからかっているわけでもないと悟る。
けれど、これまで健か言われたことがなかったから、言葉の真意がわからない。

「あの、その『好き』は後輩として?それとも妹として?」

「はぁあ?妹なわけないだろう?
恋愛対象として好きに決まってるだろ」

「ええええええええ!?嘘だ!」

あまりに突然のこと過ぎて、頭の中、大騒ぎのパニックになってしまってる!!

「何で嘘なんだよ?」
「だってさ、だってさ!」
「だってって、なんだよ?」
健は困ったような顔をする。

「私はただの後輩で、妹みたいに可愛がってもらってると思ってた!
むしろ恋愛対象外だと思ってた!
あれだけ一緒にいて好きだと言われたのは今が初めてだしッ!」

「言ってはないけど、全く伝わってないのもどうなんだ?
美琴、目がまんまるだぞ」
「う、うん。ものすごく驚いてるから」
「だろうな。つーか、鈍すぎだろ」

健は長ベンチに座ってトントンと隣を手で叩いた。


ベンチの座面を叩かれて、ここに座れと言う意味だと分かる。
少し健から離れて左隣に座って、尋ねた。

「あのさ、どうして今言うの?」
「どうしてかぁ‥‥まあ、そう思うよな」
「うん」
健は頭を掻きながら、ちらりをこちらの様子を窺った。

「美琴のためにわざわざハチミツレモン買ってたなんて、好きなのバレバレだろ?」
頭を掻いていた手を降ろし、しっかりと私の顔を見つめる。

「それなら、自分の口でちゃんと好きだって言いたいと思った」

真剣なその表情に私は何も言えなくなっていた。


「つーか、なんなんだ、その距離」
「え?」
指をさす先は、わざと開けて座った一人分のスペースだった。

「警戒心だすなよ、傷つくだろ」
左足を組んだ健がこちらを見た。

これはちょっと近づいて座った方がいいやつですか!?
ちょっとってどのくらいですか!?
自然に…自然に…今までみたいに‥‥って!今までどうしていた!?
一人、心の中がてんやわんや状態になっている。

「もういいよ。この距離で。
それより、何があったんだ?話してみな?」

そう言われて、あたふたとしていた思考回路がピタリと止まった。



『無理しなくていいよ』

昨日のコウさんとの出来事を思い出してしまった。

『もう一度考えて。
美琴の気持ちがどっちにあるのか』



コウさんを思ったらすぐに視界がぼやけてしまう。

やばい!泣いちゃう!

慌てて何度も何度も瞬きをした。
けれど、ポロッと1粒、消えなかった涙が零れた。

「ほんと、泣き虫だな。ん」
とハンカチを渡された。

「う…ありがとう」
受け取って、目元をゴシリと押さえた。
「待て待て待て待て。擦るんじゃない」
慌てる健にハンカチを奪われ、優しく頬と目元を押さえられた。

「そっと押さえないと、メイクがとんでもないことになるぞ。ほら」
そう言って再びハンカチを渡される。

「うん」
ハンカチで溢れてくる涙をそっと押さえ、自分を落ち着かせようと何度も深呼吸をした。

健の手が頭に触れて、ポンポンと優しく頭を撫でられる。

その間、健は何も言わずにずっと頭を撫でてくれていた。

なんか、ハンカチで涙ふかれて、頭撫でて慰められて、子供みたい。
そう思うと、だんだんおかしくなってきて、
「ふふっ」
と笑いが込み上げてきた。

「ん?なんで笑ってるんだ?」
「だって。なんだか、子供みたいで」

「確かに…。泣き止みまちたか?美琴ちゃん」
「あはは、赤ちゃん言葉になってるから、お父さん」

「うわっ。好きって言った男に向かって『お父さん』はないわぁ~」
「あはははっ。もう『だった』なんでしょ?」

「いいや、今も好きだよ」

・・・・・・え。え?

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