苦くも柔い恋
「お前が美琴に引け目を感じてるのは分かった。俺の言葉なんか信じられないかもしれねえ。…けど、」
強く握られた千晃の手は、微かに手汗で滲んでいた。
「…俺が可愛いと思ってんのは、昔から和奏だけだ」
「…そんなこと」
「あるからまともに顔が見れなかったんだろうが。初恋だぞ、思春期の純情ナメんな」
初恋。
その言葉に顔が熱くなった。
しかも手まで握られているのだ、照れるなと言う方が無理な話だ。
信じられない事の連続で軽くパニックを起こし、ウロウロと視線を泳がせていると千晃が眉を寄せて小さく舌打ちした。
「…んな顔すんな。襲うぞ」
「!?なっ…」
とんでもない発言をした後、千晃は握っていた手をパッと離してこちらを睨んだ。
「自分の事好きだっつってる男がベッドに身を乗り出してんだぞ。少しは身構えろ、お前の危機管理どうなってんだ。隙ありまくりなんだよこの馬鹿」
千晃の言う"そんな顔"がどんなものかは分からないけれど、あんまりな物言いに少しだけ理性が戻ってきて同時にムッとした。
「え、偉そうに…!そんなこと出来る度胸なんてないくせにっ」
「はあ?前に俺に押し倒されたのもう忘れたのかよ」
「そっ、それは…」