苦くも柔い恋
例えどれほどの事が起きようと日常は当たり前のように過ぎていく。
ホワイトボードを背景に、和奏は教卓の上にテキストを置いた。
「今日はここまで。明日から休みに入りますが皆さんは受験生ですので気は抜かず、体調に気をつけて過ごしてくださいね」
お疲れ様でした、そう言うと生徒たちは各々の行動をとり始める。
ノートをしまい足早に教室を後にする子、友人と会話をする子、そして質問を投げかけてくる子と様々だ。
数人の熱心な生徒に捕まり不明点を丁寧に説明し終えた時には20時も半分が過ぎていた。
最後の生徒を見送り教室を消灯して職員室へと戻ると、いつもより室内の空気は和やかだった。
怒涛の夏季日程が半分終わったのだ、これまで忙しさのあまりピリピリしていた講師達だって息も抜きたくなるだろう。
すれ違う同僚にお疲れ様ですと挨拶をかけながら自分のデスクに座ると、香坂が声をかけてきた。