苦くも柔い恋
「驚いた。千晃って社交辞令言えたんだね」
「馬鹿にしてんのか。ガキじゃねえんだ、世辞くらい言える」
「そっか、お世辞か」
大人になったようでどこか根底が子供っぽい千晃にクスクスと笑っていると、千晃が低い声で言ってきた。
「…随分と楽しそうに話してたな」
「え?」
ぱちくりと何度か瞬きをする。
「そう?…ただ世間話してただけだけど」
本当は千晃の事を話していたのだが、そんな事は言えず少し嘘を交えた。
「仲良いのか」
「仲良いっていうか…バイトの時からお世話になってるから、信頼はしてる」
「チッ」
え、なんで今舌打ち?
そう思って千晃を見れば、言葉通りの不機嫌顔があった。
「2人で食事行ったのもあの男か」
「そうだけど…なんでそんな事聞くの」
千晃には関係ないでしょ、その言葉は続かなかった。
気付けば千晃の顔が目前まで迫っていて、慌てて身体を押した。
「ちょっ…何!?ここ外だよ何考えてるの!」
「人なんて誰もいねえだろ」
「そう、かもしれないけど…!」
大通りから少し外れたこの場所は公園が側にあって、21時を超えると途端に人気がなくなる。
実のところこの公園を突き抜ければかなりの時間短縮になる。
ただ平日は真夜中の帰宅になるので怖くて遠回りになりながらも大きな道沿いを通って帰るが、土曜日はそれほど夜が更けていないこともあってこの近道を通る事が多い。
まさかそれが仇となるなんて、今の今まで気付かなかった。