苦くも柔い恋
「なにもこんないいところじゃなくても…」
部屋着なんだからもっと適当で低価格なものでいい。
小声でそう文句を垂れたのだが、千晃は聞く耳を持たないようだった。
「俺が勝手に買うんだからいいだろ別に」
「へっ?千晃が?」
買うってどいういうことだ、そう思っているうちに千晃は我が物顔で店内へ進んでいき、服を手に取った。
「とりあえず2、3着あれば足りるだろ」
「い、いいよそんなに要らないから!」
慌てて止めに入り阻止する。
有名ブランドだけあって質もいいし肌触りも抜群だが、いかんせん部屋着にしてはそれなりのお値段がする。
自分で買うのも憚られるのに、買ってもらうなんてそれこそ気が引けてたまらない。
「分かった、ちゃんと自分で買うから一旦落ち着いて?」
「和奏お前サイズはSとMどっちだ」
「Mサイズ…じゃなくて!」
そう言って千晃の腕を掴んだところで、千晃が真顔で見下ろしてきた。
「…そんなに俺からのプレゼントが嫌かよ」
どこか寂しげにも聞こえる声色に、思わず言葉が失った。
「ちが、そういうのじゃなくて」
「……」
「だ、だって、記念日でもなんでもないし、申し訳なくて…」