苦くも柔い恋
千晃の真っ直ぐな視線に言葉尻を濁せば、千晃は再び商品棚に目を向けた。
「…そういうのしてこなかった俺が言う資格は
ねえけど、それが理由なら尚更俺が買う」
「どうして…?」
「記念日。もうすぐだろ」
「……」
千晃の言葉に思わず目を剥いた。
「…覚えてたの?」
千晃と交際を始めた日は、夏のお盆期間を過ぎてすぐの頃だった。
当時はお付き合いなんていえるような交際をしていなかったからわざとスルーしていたけれど、千晃が覚えていたことはあまりに予想外だった。
「…ずっと覚えてた。ただ…おめでとうってのも、ありがとうっつーのもなんか違う気がして…何を言っていいか分からなかった」
「……」
「数年分の詫びと祝いだって言えば、受け取ってくれるのかよ」
視線は交わらないままだけど、千晃なりの誠意が伝わってくるようだった。
どこまでも不器用な人だ、本当に。
他のことはなんでも簡単にこなしてしまうくせに、和奏の事になると途端にそれが失われる。
以前ならそれすら言い訳に聞こえてしまっていただろう。
けれど真っ直ぐに千晃の気持ちを聞き、だんだんと受け入れられるようになった今は、そんな姿が可愛いと——愛おしいと、感じるようになってしまった。