苦くも柔い恋
和奏の担当教科は英語であり、通常業務に加えていくつか個人授業も持っている。
個人で受け持つ子に関しては志望校に関する傾向と対策も必須だ。
ありがたい事に指導に必要な教材は申請すれば塾側が経費で購入してくれるので和奏は休みに入る数日前から少しずつ必要な大学のテキストを買って持ち帰っていた。
おかげで傍には積み上がった赤本やら問題集が山積みになって場所を取っているが、まあ見慣れた光景なので今更何も思いはしない。
先ずはと通常授業で使うテキストを開いて文字を追うが、問題構成や問うてくる題材に大きな違いはないのでこちらは軽く流し読みするだけで良さそうだ。
だが目の前で広げられる千晃の受ける設計製図試験の対策問題に関してはもう何がなにやらさっぱりだ。
建築設計に関する知識なんてLDKとDKの違いがギリギリ分かる程度の拙いものである上、絶望的に絵心の無い和奏には建物の構造を精密に描くなんて到底できるものじゃない。
だからこそ、千晃の目指すものは純粋に尊敬の対象になり得る。