苦くも柔い恋


真剣な表情で目を落とす千晃に静かな鼓動を覚えながから、和奏はリスニングに切り替えるため耳にイヤホンを当てた。

ここの大学はリスニングに配点の多くを置いているから普段から聞き慣れてもらわないと、あの子は和訳は問題ないけど英作文は不安があるからカリキュラムを見直そう。

そんな事を同時に考えながらノートやタブレット、テキストの間で視線を往復させひっきりなしに手を動かして暫くの間集中した。


そうしているうちにどれくらいの時間が経っただろうとキリのいいところでふと視線を上げれば、すっかり昼の時間を過ぎていた。


「千晃、何か飲み物でも取ってこようか?」


そう声をかければ千晃が短く「ああ」と返事を返した。


「もうこんな時間か」

「私もさっき気付いた。お昼食べる?素麺でいい?」

「そうだな、頼む」


和奏はにこりと笑みを返して立ち上がり、キッチンへと向かった。

もう少し日が傾いたら買い物行かないとなあ、とあまり豊富とは言えない冷蔵庫の中を見ながらそう思った。



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