苦くも柔い恋
「和奏…俺…」
「そんな顔しないで。…いいんだよ」
「けど、」
「本当にいいの。私は何も後悔はしてないから」
寧ろこの選択をして良かったとすら思っている。
無理をして受かった大学へ進んだとてちゃんと授業についていけたかも卒業できたかもわからないし、選んだ大学に後悔は無い。
友人だって出来た。いい仕事にも就けた。
強いて引け目を感じるとすれば両親だけど、帰省出来ずとも和奏が幸せに暮らしてくれるならそれでいいと言ってくれる優しい親だから、きっと許してくれる。
それに何より、同じ大学に通っていたら千晃はここまで変わってくれなかっただろう。
それに自分だって、美琴への劣等感で周りが見えなくなったまま孤独に過ごしていたに違いない。
だから、いいのだ。
今の生活に満足していると、自信を持って言えるから。
そう伝えるも、千晃は未だ責任を感じているのか顔に手を当てて項垂れた。
「俺…ほんと何してたんだろうな」
「千晃…」
「ごめん、和奏」