苦くも柔い恋
「館内のスタンプ全部押せたら景品もらえるんだって。やろうかな」
「ふーん…何もらえんの」
「さあ。けど宝探しみたいで面白そう」
「ガキ」
「ひどい」
千晃の悪口をスルーして家族の後に続いてスタンプを押す。
その後館内に入り順序に従って進み、大きなアクアリウムの中を悠然と泳ぐ魚達を眺めながら隣に並んでゆっくりと歩く。
歩きながら不意に千晃に手をすくわれ、指を絡められた時はドキリと胸が跳ねたものだが、少しずつそれも収まってきた。
一通り見て回ったところで少し早めに会場へと向かい、席を確保する事にした。
既に水槽では悠々とシャチが泳いでおり、意気揚々と前へと向かったのだが千晃に引き止められる。
「前過ぎると濡れるらしいぞ」
「あ、そっか」
着替えなんてものは持ってきていないのでスタッフの声に従い濡れない位置の席に座った。
軽食を買ってくると言って千晃は席を離れ、ぼんやりとしながら待っていると間も無くして千晃が色々と買って戻ってきた。