苦くも柔い恋



「つか見つけても声かけてくんなよ」

「だって気になるじゃん。お前がこんな縁遠そうな所にいるなんて興味もわくって」


そう言うと男はこちらに視線を寄越し、目が合った。


「その子、お前の彼女?」


男は人のいい笑顔を向けてきたが、和奏の表情は強張る。

不似合いだと言われたらどうしよう。せっかく香坂が背中を押してくれたのに。

自虐的な考えをぐるぐるとさせていると、千晃がはあ?と声を上げた。


「それ以外に何に見えんだよ」


つい千晃の顔を凝視してしまった。

はっきりと、彼女である事を肯定してくれた。
たったそれだけ、当たり前の事なのにひどく嬉しくて、手に持っていたスマホを強く握りしめた。


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