苦くも柔い恋
「彼女がいるってマジだったんだ」
「そう言ったろ」
「だってお前そんな素振り全くねえし、ただのカモフラかと思ってたんだよ」
「カモフラってなんだよ」
「え〜それを彼女の前で言わす?」
再び視線が向けられ、反応に困った和奏はぺこりと頭を下げた。
おそらくその言い回しからして千晃がかなり人気がある事を示唆しているのだろう。
やはりというか、相変わらず千晃はどこにいても人の気を引く男らしい。
「なんだ、美琴じゃなかったんだ」
久しぶりに耳にするその名前に、ぞくりと血の気が引いた。
女の言葉に彼氏である男が諌めたが、本人はあまり気にした素振りもなく、それより寧ろ自分に向けられる視線はどこか敵意を感じるほどに刺々しかった。