苦くも柔い恋


「どうしてここに?」

「和奏と話がしたくて」


いつかに聞いた台詞。
けれどあの時とは比べ物にならないほどの冷や汗が流れ落ちる。

これはまずい。本能がそう訴えていた。


「…外で話そう。荷物置いてくるから待ってて」


今の美琴を家に上げるわけにはいかなかった。
何をしてくるかわからなかった。


「分かった。待ってるね」


優しい声。けれど同時に恐ろしいほどに冷えた声色に全身の血の気が引いた。

千晃に連絡、そう思ったけれど彼のいる場所はここから数時間もかかる場所だ。
すぐに駆けつけられるわけでもないのに話せない。

部屋の玄関に荷物を置き、和奏は大きく息を吸い込んだ。


——大丈夫。話すだけ。


人当たりのいい美琴が外で何か危害を加えてくるとは思えない。

そう何度も言い聞かせ、千晃に帰宅の旨だけ書いたメッセージを飛ばし、改めて玄関の扉を開いた。

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