苦くも柔い恋
その間夢を見た。
美琴が千晃の腕を掴み、2人で去っていく夢。
それをただ立ち尽くして見ているだけの自分。
これは現実だろうか、それとも未来の予知夢だろうか。
ただひたすらに涙をながしながら見送るしかできないその光景を、他人事のように眺めていた。
そして微かに耳に聞こえてきたインターホンの音に、ゆっくりと意識が浮上した。
「う…」
頭が酷く痛む。
顔を歪めながら体を起こせば21時で、来訪者が誰かはすぐに察しがついた。
「……」
重い気持ちのまま起き上がり、無言でエントランスを解除する。
邪魔な髪だけ結い上げてコップに水道水を溜めて飲み干すと、丁度玄関からのチャイムが鳴った。
歩みを進めて扉を開け、目にした姿は何週間も会いたくてたまらなかったはずなのに、今は顔を見るのが辛かった。
「久しぶりだね」
精一杯の笑顔を向けたつもりだった。
けれど千晃は眉を寄せ、無理矢理中に入り込んで肩を掴んできた。