苦くも柔い恋



「何があった」

「…何も」

「そんな嘘を信じると思うのか」


やっぱり無理だったか。このどうにも感情の出やすい顔をどうにかしなければ。

そんな事を考えながら、肩に置かれた千晃の腕を掴む。


「…ちゃんと話す。とりあえず中に入って」


するりと腕を解き、奥へと進む。
テーブルの前に腰をかけると、荷物を置いた千晃は隣に座ってきた。


「…和奏」

「美琴に会ったの」


瞬間、千晃の顔が強張る。


「…あいつ、何か言ったのか」

「そうだね。今でも千晃と隠れて会ってるって言ってたよ」

「はあ?」


これ以上無いほどに不快に歪んだ千晃の顔に、やはり嘘だったのだと知る。


「和奏、それ信じて…」

「ううん。そうじゃないの」


和奏は静かに首を振る。


「違うって分かってる。けど…なんでかな、美琴の言葉って、すごく頭に残るの」

「……」

「双子だからかな…なんて。でも、分かってるのに、怖くて」


ぽろりと涙が落ちる。
ああ自分はずっと泣きたかったのだとその時初めて気付いた。


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