苦くも柔い恋
「和奏っ」
「…っ!」
捕まれた腕を振り払い、その場に力無く倒れ込んだ。
息が苦しくなり、呼吸すらままならなかった。
嘘だと言って欲しい。これは現実?
それとも今までのが全て虚像だった?
頭が混乱して、もう訳がわからなかった。
そんな和奏に、千晃は再び寄り添う。
「聞いてくれ、和奏」
「…っ、なにを…!」
今し方本当だって言ったじゃないか。
そう意味も込めて睨めば、千晃は怯むことも目を逸らすこともしなかった。
「会場で潰れたのは本当だ。けど、家に着いてからの記憶はあるんだよ」
「……は?」
千晃を見つめれば、千晃はしっかりと頷いた。
そして肩を抱いて立たせ、椅子へと座らせる。
「誤解を招く言い方をしてすみません。確かに美琴に家まで送ってもらったのは本当です。けど、誓って手は出していません」
「…それを簡単に信じろと?」
父が疑いの目を向けたが、千晃は譲らなかった。
「はい。玄関前で意識が戻って、美琴にはそのまま帰ってもらいました」
「……」
「だよな?美琴」