苦くも柔い恋


「ね、季節限定はどう?」

「美味いけど、俺はノーマル派だな」

「そうなの?ちょっと食べてみたい」

「ん」


千晃は自然な流れでフォークに乗せたタルトを差し出してくる。

側から見ればこの光景は所謂「あーん」というやつだ。家の中ならともかく人の目があるところはさすがに恥ずかしく躊躇していると、今度は千晃が笑う。


「和奏チャンはウブですね」

「千晃はもう少し恥じらいを持った方がいいよ」


そう言って睨み、勢いよく頬張った。


「……」

「感想は?」

「…美味しいよ」

「食レポうっす」

「恥ずかし過ぎて味わかんないんだよ」

「ははっ」


最近の千晃はよく笑う。
その8割はこうして揶揄うときのものだけど、好きな人の笑顔を見れて嬉しくない訳がない。

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