苦くも柔い恋
……は?
あまりの衝撃にそれまでぐるぐると渦巻いていたものが一瞬にして全て吹き飛んだ。
付き合っている?
あれから一体何年経ってると思ってるんだ。
この後に及んで、君がその話を持ち出してくるの?
「…どの口が、」
次いで出た言葉は、恐ろしく冷え切った声だった。
「私達のどこに彼氏彼女らしいものがあったの?いつも美琴ばっかり優先していた人が言う台詞?」
「…は?」
まるで分からないといった様子の千晃に和奏の苛々がピークに達する。
「私聞いたよね、美琴と付き合ってるの?って。その時君がなんて答えたか覚えてる?馬鹿なこと聞くなって、ただそれだけ。…ねえ、どうしてそんな事聞いたかわかる?学校中がそうやって騒いでたからだよ」
「……」
「それにさ、君達いつも夜遅くまで一緒に受験勉強してたよね。私見たよ、美琴を家まで送って帰っていく君の姿」
「それは、」
堰を切ったように溢れ出る言葉は千晃の介入を許さず、和奏は顔を歪めたまま言い続ける。