苦くも柔い恋


「引退試合の夜だって、あれはなに?勝手に呼び出して勝手にキスして…私は、君の都合のいいお人形じゃない!」


ダン!と勢いよく机を叩き、堰を切ったように吐き出した言葉にぜえぜえと荒い呼吸を繰り返した。
思い返せば全て辛かった記憶しかない。

あれのどこが付き合ってるというの。

どの口でそんな言葉が言えるの。

頭を掻きむしりながら俯き、髪で視界が真っ黒に覆われたまま弱々しい言葉で続けた。


「…彼女は私のはずなのに、君の隣には美琴ばかりが居た。…いつも楽しそうに話す2人を見て…私が何を思ってたなんか、君にはわからないでしょう…?」


顔を上げれば、堪えきれなかった涙が一筋だけ流れた。


常に感じていた疎外感。

仲睦まじく、誰が見てもお似合いな者同士2人だけの世界がそこにはあって、自分はいつも蚊帳の外だった。


姉には笑いかけるのに、自分には欠片も笑顔を見せてはくれない好きな人。

それがどれほどの苦しみか分からないのならば、もう一生顔なんて見たくなかった。

勝手にしてくれと思った。

どうせ2人とって自分はただの道端の石ころで、いつのまにか無くなっていたって気づきもしないものなのだから。


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