苦くも柔い恋



「え、絶対にイヤなんだけど」

「ぜってえ行く」

「だからヤダって」

「……」

「〜っ、もう!」


強情なのはどっちだ。
もちろん千晃が昔からそうである事知っている。

けれどこれはそれというより、わがままに近い気がする。


思えば千晃に此処に泊まるよう提案した日から話す事が増え、それまで思い描いていた千晃と少し違うところが見えてきた。

千晃が変わってしまったのかと思ったが、たぶん違う。

きっと元々そうだったのだ。


それほどまでに自分達に会話が無かったのだと思うとなんとも言えない気持ちになるが、となれば先日の香坂が言った言葉が妙に腑に落ちてくる。

器用に見えて不器用だと言った、あの言葉を。


「…ねえ、聞きたい事があるんだけど」


和奏から何かを話しかけるのはほとんど初めてだった。

だからか千晃は一瞬目を剥き、それからなんだと聞いてきた。



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