冷徹ドクターは初恋相手を離さない
「そこで当時のかかりつけ医からの勧めもあって、水泳教室に通い始めた。適度な運動で体力をつけるためにね。中学入るまで続けたよ」
「へぇ。小さい頃スイミングやってたんですね」
「そう。なんかこれ話すと意外だなとか言われるけど、そんなにイメージと違う?」
直哉さんがいつもより柔らかい話し方と声で、笑いながら私に聞いてくる。
「はい。なんかこう……弓道とかのイメージがあります」
「うーん、そうか。そう見えるのか。それを言われるのも初めてだけどな」
そして直哉さんは『ははっ』と小さく笑いながら、そうかなぁ、と言った。
私は最近、気づいたことがある。
直哉さんは基本的にあまり表情が豊かではない方なのだろうけれど、一緒にいてその僅かな変化もわかるようになってきた。何か嬉しそうなことがあると口角が上がっているのだってわかる。
冷徹だと言われるのは、表情の変化がわかりにくいことと、間違いだと思ったことや疑問に感じたことはズバズバと躊躇わずに追求する姿勢があるからだろう。
そうしたところが周りの人々からは面倒に思われ、やがて一線置かれたような扱いをされたのかもしれない。そうした振る舞いから噂好きの誰かによって話を盛った噂が広がり、『冷徹なヤバイ医者』という像が完成したのだろう。
「中学生になった時、柔道の道場に見学に行ったんだ。部活見学をした時に柔道をやってみたいと思ったが、当時の俺に部活レベルの運動量や強度だと身体が追いつかないだろうということで、医師と相談して入部は諦めた。でも、母と一緒に見学に行った喘息を持っていても受け入れてくれるという道場に入門できることになったんだ」
「それであの……」
柔道というワードですぐに頭の中に浮かんだのは、裕太を背負い投げしたあの日のシーンだ。さすがにあんな綺麗に技を決められるのは、素人ではないだろうと思ったけれど。まさか経験者だったなんて。
「ん?」
「あ、いえ。続けてください」
「ああ。それで、入門した道場で出会ったのが松坂先生だったんだ」
松坂先生という人の名前を聞いたのも初めてだった。
こんなにも知らないことが多かったことを知り、落ち込まないと言っては嘘になるが、でも、こうして話してくれたおかげで今までよりももっと直哉さんのことを知ることができて嬉しい。
「へぇ。小さい頃スイミングやってたんですね」
「そう。なんかこれ話すと意外だなとか言われるけど、そんなにイメージと違う?」
直哉さんがいつもより柔らかい話し方と声で、笑いながら私に聞いてくる。
「はい。なんかこう……弓道とかのイメージがあります」
「うーん、そうか。そう見えるのか。それを言われるのも初めてだけどな」
そして直哉さんは『ははっ』と小さく笑いながら、そうかなぁ、と言った。
私は最近、気づいたことがある。
直哉さんは基本的にあまり表情が豊かではない方なのだろうけれど、一緒にいてその僅かな変化もわかるようになってきた。何か嬉しそうなことがあると口角が上がっているのだってわかる。
冷徹だと言われるのは、表情の変化がわかりにくいことと、間違いだと思ったことや疑問に感じたことはズバズバと躊躇わずに追求する姿勢があるからだろう。
そうしたところが周りの人々からは面倒に思われ、やがて一線置かれたような扱いをされたのかもしれない。そうした振る舞いから噂好きの誰かによって話を盛った噂が広がり、『冷徹なヤバイ医者』という像が完成したのだろう。
「中学生になった時、柔道の道場に見学に行ったんだ。部活見学をした時に柔道をやってみたいと思ったが、当時の俺に部活レベルの運動量や強度だと身体が追いつかないだろうということで、医師と相談して入部は諦めた。でも、母と一緒に見学に行った喘息を持っていても受け入れてくれるという道場に入門できることになったんだ」
「それであの……」
柔道というワードですぐに頭の中に浮かんだのは、裕太を背負い投げしたあの日のシーンだ。さすがにあんな綺麗に技を決められるのは、素人ではないだろうと思ったけれど。まさか経験者だったなんて。
「ん?」
「あ、いえ。続けてください」
「ああ。それで、入門した道場で出会ったのが松坂先生だったんだ」
松坂先生という人の名前を聞いたのも初めてだった。
こんなにも知らないことが多かったことを知り、落ち込まないと言っては嘘になるが、でも、こうして話してくれたおかげで今までよりももっと直哉さんのことを知ることができて嬉しい。