冷徹ドクターは初恋相手を離さない
「先にシャワーで頭とか身体とか洗ってから、ゆっくり露天風呂に入ろう」
「う、ううっ、はい……」
こうして私は反論できず、直哉さんの提案通り一緒に露天風呂を満喫する運びとなった。
(本当に私、直哉さんと一緒にお風呂……)
私はこれまで直哉さんとお泊まりを数回したことがあるけれど、一緒にお風呂に入ることなんてしなかった。
初体験もまだだし、服に隠された部分を見るのは初めてだ。
(うう……緊張する……)
先に直哉さんはシャワーを浴びて露天風呂に入って待っていると言っていた。シャワーは二人で入るには狭いからそこは諦めてくれたようだけれど。
私はしばらくシャワーのお湯を頭から浴びて、精神統一をする。
「よ、よしっ! 行くぞ!」
意を決した私は、シャワーを止めて露天風呂の隣にあるシャワーブースのドアを開けた。すると、ひゅう、と夜風が吹いて寒さを感じた。夏とはいえ、標高の高い場所の夜風は冷たいし、シャワーを浴びた後なのだから尚更だ。
私は寒さに耐えながら、忍び歩きで露天風呂に向かう。
「詩織、おいで」
「うっ、は、はいっ!」
シャワー室のドアが開いた音が聞こえたのか、私にそう呼びかける直哉さん。
そちらの方からはざぁ、と湯船からお湯が溢れる音がして、そこに直哉さんがいるのだと思うと足が進まない。
「いい匂い……」
やっとの思いで露天風呂の方まで歩くと、そこには大人が二人入っても余裕がありそうなサイズの檜の露天風呂があり、組子細工のおしゃれな和風の間接照明が隅に置かれていて、うっとりとしてしまうムードが溢れている。そして、檜と湯の香りが混ざり合ってとてもリラックスできる雰囲気であった。
「ほら、早く入らないと寒いだろう」
「はい……」
私は直哉さんに見られながら胸を両腕で隠しながら浴槽に入る。
仕方ない、私が転ばないように見ているのだろうから。
片足を入れた瞬間、一気に温泉の暖かさがつま先から上半身にまで染みわたるような感覚が広がる。
「あーっ、気持ちいい……」
ざぶん、とそのまま勢いよく湯舟に浸かると、あまりの気持ち良さに可愛げのない声が出してしまった。
無意識に出てしまった声に恥じらいを感じて口元を隠すと、直哉さんは笑っていた。
「隠さなくていい。気持ち良ければ取り繕わないで気持ち良くなればいい」
うっかり出てしまったおじさんのような声にもそう言ってもらえると、なんだか気が楽になる。
今までの私は、こういうちょっとしたことにすら『女として見られなくなってしまうかもしれない』と思うと気を遣ってしまっていた気がする。
「ありがとうございます」
私は直哉さんに微笑んでお礼を言って、はあ、と一息ついて顔を見上げる。すると、柵の向こう側に夜空が一面に広がっていた。そこには濃紺の空に煌めく星々が輝いていて、目を奪われてしまう。
明かりが絶えない街に住んでいたり毎日の忙しい日々で空を見上げる余裕すらなかったりした私にとって、頭上に広がる世界は、なんだか懐かしく、忘れることができないほどの美しい思い出が蘇ってくるような景色だった。
「う、ううっ、はい……」
こうして私は反論できず、直哉さんの提案通り一緒に露天風呂を満喫する運びとなった。
(本当に私、直哉さんと一緒にお風呂……)
私はこれまで直哉さんとお泊まりを数回したことがあるけれど、一緒にお風呂に入ることなんてしなかった。
初体験もまだだし、服に隠された部分を見るのは初めてだ。
(うう……緊張する……)
先に直哉さんはシャワーを浴びて露天風呂に入って待っていると言っていた。シャワーは二人で入るには狭いからそこは諦めてくれたようだけれど。
私はしばらくシャワーのお湯を頭から浴びて、精神統一をする。
「よ、よしっ! 行くぞ!」
意を決した私は、シャワーを止めて露天風呂の隣にあるシャワーブースのドアを開けた。すると、ひゅう、と夜風が吹いて寒さを感じた。夏とはいえ、標高の高い場所の夜風は冷たいし、シャワーを浴びた後なのだから尚更だ。
私は寒さに耐えながら、忍び歩きで露天風呂に向かう。
「詩織、おいで」
「うっ、は、はいっ!」
シャワー室のドアが開いた音が聞こえたのか、私にそう呼びかける直哉さん。
そちらの方からはざぁ、と湯船からお湯が溢れる音がして、そこに直哉さんがいるのだと思うと足が進まない。
「いい匂い……」
やっとの思いで露天風呂の方まで歩くと、そこには大人が二人入っても余裕がありそうなサイズの檜の露天風呂があり、組子細工のおしゃれな和風の間接照明が隅に置かれていて、うっとりとしてしまうムードが溢れている。そして、檜と湯の香りが混ざり合ってとてもリラックスできる雰囲気であった。
「ほら、早く入らないと寒いだろう」
「はい……」
私は直哉さんに見られながら胸を両腕で隠しながら浴槽に入る。
仕方ない、私が転ばないように見ているのだろうから。
片足を入れた瞬間、一気に温泉の暖かさがつま先から上半身にまで染みわたるような感覚が広がる。
「あーっ、気持ちいい……」
ざぶん、とそのまま勢いよく湯舟に浸かると、あまりの気持ち良さに可愛げのない声が出してしまった。
無意識に出てしまった声に恥じらいを感じて口元を隠すと、直哉さんは笑っていた。
「隠さなくていい。気持ち良ければ取り繕わないで気持ち良くなればいい」
うっかり出てしまったおじさんのような声にもそう言ってもらえると、なんだか気が楽になる。
今までの私は、こういうちょっとしたことにすら『女として見られなくなってしまうかもしれない』と思うと気を遣ってしまっていた気がする。
「ありがとうございます」
私は直哉さんに微笑んでお礼を言って、はあ、と一息ついて顔を見上げる。すると、柵の向こう側に夜空が一面に広がっていた。そこには濃紺の空に煌めく星々が輝いていて、目を奪われてしまう。
明かりが絶えない街に住んでいたり毎日の忙しい日々で空を見上げる余裕すらなかったりした私にとって、頭上に広がる世界は、なんだか懐かしく、忘れることができないほどの美しい思い出が蘇ってくるような景色だった。