冷徹ドクターは初恋相手を離さない
「愛しています。直哉さん」
 乱れた髪を手櫛で梳き、寒くならないようにと用意されていた浴衣を緩く着る。激しい動きを止めてしまうと、快適な室温に保たれているこの部屋では何も着なければ肌寒い。
 広いベッドの中心でふたりが横になって抱きしめ合い、見つめ合う。あたたかい直哉さんの胸の中はとても安心する。いい匂いだ。
 そんな中で私が直哉さんの耳元で絞り出すような声でそう伝えた。
 これまで言えなかった『愛している』という一言を、自信を持って言えた。
 どんなことがあっても直哉さんは私の傍にいてくれる。そして私も、どんなことがあっても直哉さんの傍にいたいし、直哉さんの力になりたい。
 それなら私は、ちゃんと言葉で伝えなくてはいけない。
 怖がっていたらダメだ。
 私は直哉さんの彼女なのだから。
「ありがとう、詩織。俺も好き。大好き。愛してる」
 直哉さんはそう言って私を抱き寄せてくれた。私を愛おしむ気持ちがその腕から、表情から、全てから感じる。
 私はそのあたたかな愛に包まれながら、静かに目を閉じた。
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