冷徹ドクターは初恋相手を離さない
 四週間後。
 私は無事に退院することができたが、退院してからも状態に応じた自宅での安静が続いていた。そんな中、先日の健診で家事や軽い散歩や体操などの許可が下りたので、家事をした後に家で体操をしようとしていた時だった。
 今日は妊娠三十八週三日。
 切迫早産で入院してしまったけれど、いつ生まれても大丈夫な時期に入ってくれて大きな不安は解消されていて、食事もたくさん摂るようになっていた頃。何か甘いものが食べたいな、なんて思って立ち上がった瞬間である。
「破水!?」
 予定日よりも早いけれど正期産の時期。破水が起きてもおかしくない。
 私は慌てて病院に電話をすると、入院セットを持って病院に来てそのまま入院という流れになると指示があったのでタクシーに乗って病院へ向かった。
 慌てた様子を電話口で悟ったのか、電話に出てくれた助産師さんが『突然のことでびっくりしましたよね! 陣痛が来るかと心配になるかと思いますが、その頃には病院に到着していると思いますから、急がないでゆっくり来てください!』と今後の見通しもわかるように伝えてもらい、安心することができた。
 私は陣痛タクシーが到着するとそれに乗って病院へ向かう。その道中で、直哉さんにも連絡を入れた。立ち会い出産を希望してくれているので、メッセージを入れた。
 あとは長い陣痛に耐え、出産するだけ……。緊張してきた。
 病院に到着するとすぐに産婦人科病棟に通され、助産師さんが迎えてくれて希望していた個室に向かい、手続きを済ませると入院となった。
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