エリート御曹司の溺愛に甘く蕩かされました
 時は過ぎ、私は手に真っ白な円形のウェディングブーケを持ち、チャペルの扉の前に立って、入場のタイミングが来るのを待っている。
 製品プレゼンはほぼ終了。後は模擬結婚式を残すのみとなった。

「藤島さん、そろそろ入場の時間よ。必ず成功するから、にっこり笑顔でね」

 指示をくれる篠崎さんに頷いてみせた時、扉の向こうからパイプオルガンの音が響いた。
 征士さんが私を紹介する声が聞こえる。

「新婦役を務めますのは、弊社Ange Premierプロジェクトチームの一員であり、そして、私の最愛の人、藤島乃愛です」

「えっ?」

 驚く間もなくチャペルの扉がゆっくりと開かれ、私は慌てて笑顔を作って大きな歓声に応えた。
 いっ、今、征士さん、私を最愛の人だって紹介したよね? そんなこと、リハーサルでは言ってなかったよ!!
 内心パニックの私の後ろで、篠崎さんが「やれやれ」と呆れた声を出す。

「そういうサプライズは、事前に私にも教えなさいよね。ま、情熱的でいいんじゃない? 行ってらっしゃい」

 温かい手で背中を押され、私は何とか落ち着きを取り戻すと、チャペルの中へと一歩を踏み出した。
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