エリート御曹司の溺愛に甘く蕩かされました
 背の高い征士さんに釣り合うように、ハイヒールのパンプスを履いている私。数日前、実際にウェディングドレスを着て歩く練習はしたけれど、本番の緊張の中だと足がふらつきそう。

――だけど。

 私は背筋を伸ばして真っすぐ歩く。祭壇の前で、タキシード姿の征士さんが素敵な笑顔を浮かべて私を迎えてくれるから。
 さっきの発言は驚いたけれど、私にとっても彼は最愛の人だ。
 だから、きっと今の私も、最高の笑顔をしているはず。
 征士さんの元に辿り着き、向かい合う。彼が私のウェディングベールを上げると、わっと、一際大きな歓声が上がった。
 嵌めていた白い長手袋を外し、傍に控えていた係の人に渡す。そして、私たちの元にリングピローが差し出された。天使の羽を模したシフォンで飾られた、真っ白なリングピロー。その上で、Ange Premierのマリッジリングが煌めいている。

「綺麗……」

 思わず呟く私に微笑んでみせてから、征士さんがリングピローから指輪を手に取った。恐る恐る左手を差し出すと、彼はその手を取り、薬指にそっと指輪を嵌めてくれる。
 優美な曲線の模様と、幾粒も並べて配されたダイヤモンド。今が模擬結婚式の最中であることも忘れて、うっとりと眺めていたくなるような美しさだった。

 私もリングピローの指輪を手にして、征士さんの左薬指に嵌める。
 ふたりで招待客の席に向き直り、指輪を嵌めた手を掲げて見せると、大きな拍手が私たちを包んだ。
 征士さんの顔をチラッと見ると、彼も私に視線を遣っていたようで、目が合う。ふたりで照れ笑いをしながら、私は征士さんとずっと一緒に生きていきたい、そう思っていた。
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