エリート御曹司の溺愛に甘く蕩かされました

エンゲージリングに永遠の愛を

 Ange(アンジュ) Premier(プルミエ)のお披露目イベントは盛況のうちに幕を閉じた。
 模擬結婚式の後、私は征士(せいじ)さんと共に写真撮影の仕事をした。緊張を何とか笑顔で隠してカメラに収まり、無事に終了。
 まだイベントの後処理があるものの、私はもう帰宅して良いと言われた。今は衣装部屋で、ウェディングドレスから私服のワンピースに着替えたところ。

「皆より先に帰るのは申し訳ないけど、脚が疲れて使い物にならないものね……」

 長時間ハイヒールを履いていたので、両足の感覚が雲の上を歩くように頼りない。
 自分の荷物をまとめていると、部屋のドアをノックする音が聞こえた。
 係の人かと思ってドアを開けると、そこにいたのは征士さんだった。

御堂(みどう)課長、お疲れさまです」

「ああ。今日は本当に疲れただろう? 慣れないことをさせて悪かったな」

 労りの表情を浮かべる征士さんに、「いえ」と首を横に振る。ずっと緊張し通しだったけれど、とても素敵な経験が出来た。

「もう帰れそうか?」

「はい。今ちょうど、皆さんに挨拶して帰ろうと思っていたところです」

「そうか。良かった、行き違いにならなくて」

「何か御用ですか?」

 すると征士さんは、思いがけないことを口にした。

「俺も今日の仕事は終了だ。これから、頑張った君にご褒美をプレゼントしたい」

「そんな、仕事でやったことなので、ご褒美なんて必要ないですよ」

 両手をぶんぶん振って断ると、征士さんはクスッと笑った。

「真面目だな。じゃあ、違う言い方をしようか。これから、愛しい恋人を久しぶりのデートに誘いたい。最近は忙しくて、ふたりの時間が取れなかったからな」

「あ、えっと、そういうことならぜひ」

 征士さんの甘い言葉に、顔が熱くなる。だって、イベントは終わったけれど、衣装部屋にいて皆への挨拶もまだだから、今は仕事中……だよね?

「良かった。といっても、君は疲れているようだから、移動はしない。ここのホテルの部屋を取ってるんだ。今夜はそこでゆっくり過ごそう」 

「えっ」

 予想外の提案に驚く。ここは外資系ブランドの高級ホテル。一泊するだけでも、私には贅沢過ぎる値段だろう。

「そ、そこまでしてもらわなくても、私は疲れてませんから」

「遠慮する必要はないさ。俺が乃愛(のあ)とふたりきりで過ごしたいだけだから」

 まごつく私に構わず、征士さんは衣装部屋に入ると「荷物はこれで全部か?」と、私のバッグを手に取った。
 いつもよりちょっと強引な征士さんにびっくりしつつも、久しぶりのデートに浮かれる自分がいるのも事実で。
 私は「ありがとうございます」とお礼を言って、彼の後に付いていった。
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