エリート御曹司の溺愛に甘く蕩かされました
「Ange Premierのプロジェクトメンバーの件、どうして私を任命したんですか?」

 任命後の企画会議で、プロジェクトメンバーの人選をしたのは御堂課長だと聞いた。
 どうして彼は、未熟な私を選んだんだろう? 他に適した人はたくさんいただろうに。
 私の質問に、御堂課長はちょっと呆れたような顔をした。

「それは会議の時に説明しただろう。藤島さんはAngeのターゲット世代だ。Angeの製品を買ったことのある女性が、この先どうしたらAnge Premierに興味を持ってくれるのか、そこを考えてほしい」

「確かに私はAngeのターゲット層ですが……でも、実績も少なくて、若手の中でも特に優秀ではないですし」

「俺はそうは思わないが」

 思いがけない言葉に、私は目を瞬かせた。

「藤島さんの今までの仕事ぶりについては、前任の課長から話を聞いている。店舗での販売経験を活かした効果的な提案が出来る、真面目な社員だと」

「えっ、本当ですか? あの、ありがとうございます」

 企画未経験の私は、前任の課長に迷惑を掛け通しだった。それなのに……。予想外の評価に、心がじんわりと温かくなった。

「まあ、少々そそっかしい性格みたいだがな」

 そう言って、御堂課長は口角をちょっと上げる。声にからかうような色が含まれていて、私は「すみません」とひたすら恐縮した。
 御堂課長が真剣な瞳をして告げる。

「藤島さんをプロジェクトメンバーに任命した一番の理由、それは君が大事にしている指輪だ」

「今朝、一緒に探してくださった指輪のことですか」

「ああ。あの指輪は、Angeが十年以上も前に出した製品だったな」

 言い当てられて、私は感心して何度も頷いた。

「仰る通りです! よくご存知でしたね」

「これでも、御堂家の人間だからな。今はAngeの企画課長だし」

 それでも、数あるAnge製品の中から、十年以上も前に発売された指輪が分かるだなんて、すごい!
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