エリート御曹司の溺愛に甘く蕩かされました
「まさか、誰かにアクセサリーを貰う日が再び訪れるなんてね」

 十一年前に貰った宝物は、ピンクサファイアがセットされた王冠型のリング。名前も知らない年上の男の子がくれた。
 今日貰った宝物は、ロードライトガーネットとパールのブレスレット。買ってくれた相手は、まさかの上司だけど……。
 過去からの宝物と、現在からの宝物。

――じゃあ、未来は?

 今後、私に大切な相手が出来て、その人から一生の宝物……誓いの指輪を貰う機会なんて、あるのかな?

「あるわけないか」

 ドレッサーの鏡に映る私は、自嘲気味の笑みを浮かべている。
 男性との関係に一歩踏み込めない自分。触れられるのも嫌なくらいだから、そんな私と恋人になってくれる人なんて、現れないよね。

 落ち込む心を慰めるために、私は宝物の指輪を手に取った。
 指輪の内側には、メッセージが刻印されている。これはAnge製品を購入した人への無料サービスで、好きなメッセージやイニシャルを彫ることが出来るのだ。
 あの日貰った指輪に刻まれていたメッセージ。

 Bonne(ボンヌ) Chance(シャンス)(幸運を祈ります)

 いつだって私は、この言葉に励まされてきた。
 まるで、指輪をくれた男の子――今となっては、記憶の中の姿は朧げだけれど――が、私を元気づけてくれているみたい。
 そんなことを考えながら、私は穏やかな気持ちで指輪を見つめるのだった。
< 25 / 108 >

この作品をシェア

pagetop