エリート御曹司の溺愛に甘く蕩かされました
 お客様の対応も無事に終わり、私と御堂課長は響子さんに再度挨拶をしてから、Ange新宿店を後にした。
 今はふたりで新宿駅近くのカフェにいる。休憩を取りながら、さっきの打ち合わせの内容をまとめているところ。

「今日は実店舗を見られて良かった。実際に店頭に立たないと、分からないこともあるな。今後は、海外からのニーズにも力を入れるべきだろう」

 資料を確認しながら話す御堂課長に、私も同意する。

「ええ。それに、セミオーダーの売上も全店で伸びてますし、Ange Premierにもそういった要素を取り入れられたら良さそうですね」

「そうだな。今晩、デザイナーと会う予定があるから相談してみよう」

 そっか、Ange Premierのデザイナーさんって、御堂課長のお知り合いなんだよね。どんな人なんだろう。

「私も久しぶりにお客様の笑顔を見られて嬉しかったです。ペアアクセサリーには、それぞれ幸せなストーリーがありますよね」

藤島(ふじしま)さんの指輪にも?」

「えっ」

 そんなことを聞かれたのは、私が服の上から宝物の指輪に触れていたせいだろう。

「あ、すみません。気持ちが落ち着くので、つい触ってしまうんです」

「別に謝ることではないだろう。君がどうして、その指輪を今でも大切にしているのか、気になっただけだ」

「それは……」

 私がこの指輪を大切にしている理由。
 それはごく親しい人たち、職場だと沙希(さき)と響子さんにしか話していない。個人的な話になるからだ。
 でも、どうしてだろう。御堂課長には、理由を話してもいいような気がした。

「少し長くなるんですが、話してもいいですか? 私がこの指輪を宝物にしている理由を」

 思い切ってそう言うと、御堂課長は「勿論。聞かせてほしい」と微笑んだ。
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