エリート御曹司の溺愛に甘く蕩かされました
 それは今から十一年前のこと。中学二年生の春に遡る。
 ゴールデンウィークを利用して、私は初めて東京の街を訪れていた。実家はお隣の千葉県にあるけれど、東京からは遠い地域なので、今まで行ったことがなかったのだ。

 両親との二泊三日の家族旅行で、今は二日目の夕方。

「あれ? こっちの道だと思うんだけど……」

 渋谷の路地裏で、私はスマホに表示された地図と睨めっこしていた。
 旅行中はずっと両親と一緒だったけど、行ってみたいお洋服屋さんがあったから、今日は数時間、別行動を取っていたのだ。
 夕食に予約していたレストランで両親と待ち合わせるはずが、道に迷ってしまったみたい。

「こうなったら、交番を見つけて教えてもらった方がいいかな……きゃっ!?」

 スマホ画面に気を取られていた私は、通り掛かりの人とぶつかって尻餅をついてしまった。

「うわ〜、悪い悪い」

 ぶつかったのは、男の子三人組のうちのひとり。高校生くらいだろうか、皆自分より年上に見える。
 ぶつかった男の子が謝りながら手を差し出してきたのだけど、三人ともニヤニヤしていて、あまり良い感じがしない。
 それに、髪型や服装が派手で不良っぽくて、そういう人との面識がない私はすっかり怯えてしまった。
 男の子たちが口を開く。

「お前、怖がられてんぞ〜」

「え〜嘘、お兄さんたち、怖くないよ? 君、結構可愛いね」

「この子、中学生くらいだろ。ロリコンかよ、お前」

 ギャハハと大きな笑い声が響く。私はすっかり萎縮して黙り込んでしまった。

「今、ひとりだよね? お詫びにご飯でも食べに行こっか」

 そう言われながら腕を取られて、私の心は強い嫌悪感で満たされた。

「嫌!」

 とっさに掴まれた腕を振り払おうとすると、笑顔だった男の子の表情にサッと苛立ちが走る。

「は? こっちは心配してんじゃん。酷くね?」

 怒りの感情が含まれた声に、さっきよりも恐怖を募らせていると――、

「その辺にしておけ」

 私たちの背後から、落ち着いた低い声が掛けられた。
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