エリート御曹司の溺愛に甘く蕩かされました
「えっ、これは?」

「貰ってくれると嬉しい」

 何だろう。不思議な気持ちで袋を開けると、小さな紙製の小箱が出てきた。
 お兄さんをチラッと見ると、頷きが返ってくる。促されるままに、小箱の蓋を開けてみると――、

「わあ、可愛い!」

 中に入っていたのは、ピンクゴールドの指輪だった。王冠の形をしていて、中央に淡いピンク色の石が嵌まっている。
 優しい光を放つ指輪は、私の心を捉えたけれど……見るからに高価な品物だ。

「いえいえ、こんな高そうな指輪、受け取れませんよ!」

 さすがに、見知らぬ人から貰って良い物ではない。それに、

「これ、誰かにあげるために買ったんじゃないですか?」

 指輪は明らかに女物だ。彼女さんへのプレゼントじゃないのかな?
 すると、お兄さんは苦笑した。

「いや、違う。諸事情で俺が持っているだけで、別に誰かに贈る物ではないんだ。まあ、言ってみればサンプル品だな。だから、君が持っていても何ら問題はない」

 サンプル品って何だろう? 疑問に思っていると、遠くから私を呼ぶ声が聞こえた。

「あっ、お父さん」

 すると、お兄さんはベンチから立ち上がってその場を去ろうとする。

「あ、あの……」

 慌てる私に、彼は微笑んで言った。

「君が今言ったことは、ずっと覚えているといい。俺も、君の言葉を忘れない」

 姿勢良く立ち去るお兄さんの後ろ姿を見送る。
 私の手には、美しい指輪が残された。
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