エリート御曹司の溺愛に甘く蕩かされました
 十一年前に会った、名前も知らないお兄さん。ほんのひとときを共にしただけの人だけど、感謝の気持ちは今も私の中にある。

「そうですね、会ってお礼を言いたいです。当時のことだけじゃなくて、あの日、指輪を貰ったのがきっかけでAngeで働く夢を持ちましたから、それについてのお礼も」

「そうか。Angeの指輪が、君の人生を変えたのか……」

 思案顔の御堂課長に、私はこう言い添える。

「ええ。勿論、良い方向に」

 MIDOUで、Angeで働くようになって、上手くいかないこともたくさんあった。
 それに、不良の男の子たちに絡まれた一件以来、私は異性に触れられるのが怖くなってしまった。
 楽しいばかりではない人生。
 でも、私はこの指輪の思い出を、なかったことにはしたくないから。

「でも、お兄さんは私を忘れちゃっているでしょうね」

 苦笑する私に、御堂課長は優しく応える。

「覚えているさ。彼は藤島さんの言葉を大切にしているのだから」

 どうしてだろう。その口調、その眼差しが、指輪をくれたお兄さんの姿と重なった。
 もしかしたら、先日、御堂課長にブレスレットを貰ったからかもしれない。
 宝物をくれたカッコいい人という共通点があるもの。
 穏やかな時間の中で、私はきっと素敵な大人の男性になっているであろう、お兄さんのことを思った。
< 39 / 108 >

この作品をシェア

pagetop